梟の島

-追想の為の記録-

塩山小旅行(1):クリスマスの朝に恵林寺へ。

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(腰高な三門。 2019.12.25 恵林寺

 

遡れば14年前,2005年12月25日。冬休みには珍しい家族旅行で,前泊地の富士宮を発ち,身延線で北上。中央線で帰京する前に,塩山・恵林寺に立ち寄った。具体的な寺の景色の記憶はやや朧げだが,静かな境内の空気感は鮮明に覚えている。

そして2019年,12月25日。不思議な縁でまたもやクリスマスの当日に,今回は出張で山梨市に行く予定ができた。集合時間が遅めだったので,早めの列車で中野を発ち,仕事前の1時間半ほどで強引に観光をすることにした。塩山でレンタサイクルを調達し,4月の山梨観桜旅行で訪れられなかった恵林寺を「再訪」する。

 

恵林寺(えりんじ)は武田信玄菩提寺として有名である。建築的な見どころは多くないのだが,複数の門と庫裏,そして庭園を見てゆこう。

レンタサイクルは,観桜旅行の際に登録した「ぐるりん号」。8ヶ月前に充電不足で自分を苦しめた22号車があったので,これを予約した。今回は幸いほぼフル充電だった。標高差は70mほどあるのだが,水平移動の距離がさほどないので,何ら心配は無い。そんな電動アシスト付き自転車で15分,塩山駅から4kmほど県道38号線の緩やかな坂を上ってゆくと,恵林寺の駐車場に到着。ちょうど参拝開始時刻の9時頃に到着したのだが,既に先客の車が何台か停まっていた。

 

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まずは駐車場前の黒門が,力強い姿でお出迎えである。

 

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長い参道を歩いてゆくと,奥に鮮やかな朱色の門が見えてくる。

 

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国指定重要文化財,四脚門(赤門)。1606年に家康により再建された姿を残している。境内の案内板いわく「桃山期の豪放な気風」が現れているというが,確かに全体的に部材が太く安定感がある。近年修理されたようで,塗装は極めて鮮やかで毒々しいほどだった。朱,組物層の黒と檜皮の3トーンが印象的である。

 

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冬の朝の差し色。

 

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三門は県指定文化財。初層は角柱,二層は丸柱。極めて華奢な印象だ。

 

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構造専門家としては門は少し厄介なのだが,面白くもある。棟の武田菱が,誇らしげに朝日に輝く。

 

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三門をくぐった突き当たりには,開山堂がある。甲州市指定文化財。恐ろしくデコラティブな建築だ。

 

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この軒裏の意匠には驚いた。銅板屋根の裏に垂木は見えず,野地板を直接的に受ける茅負(で良いのだろうか…)と丸桁の周囲に,野地板を隠すようにびっしりと彫刻があしらわれていた。

 

その2へ続く。

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