梟の島

-追想の為の記録-

盛夏の五能線撮影(11):追良瀬~驫木,海と鉄路を大俯瞰。

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奇跡の絶景。 18.08.08 五能線 驫木追良瀬
 

2018年8月8日(火)。五能線撮影2日目。米代川の河口,八森~東八森陸奥岩崎陸奥沢辺の岩崎漁港を巡ってきた。 

anachro-fukurou.hatenablog.com

さて,本来ならばここで午前の分の撮影は終わりにして,十二湖の観光へと移動する予定だったのだが,あまりにも天気が良い。この好機を逃して明日の午前中の鉄道撮影が曇天となっては,間違いなく悔いが残る。そこで,もともと互換性のある2日目と3日目(全体の旅程としては5・6日目である)の行程を急遽入れ替える事に決定し,一路深浦を越え,追良瀬驫木の俯瞰撮影地を目指すことにした。

3日目の撮影の予定通り,塩見崎のS字カーブを俯瞰するアングルを狙う。少し南側にも俯瞰撮影地があり,こちらは過去に訪れたことがあるのだが,この「北側」は未訪であり,今回の「本命」である。

予め空撮等で見定めていた駐車スペースに車を停めた。依然として陽光は容赦なく酷烈である。小さな集落と田圃の横を抜けてゆくと,塩見崎へと抜ける未舗装道に辿り着き,ここから藪へと入るとS字のアングルを俯瞰できる撮影地に辿り着ける,はずだった。しかしまず,先人の足跡が全くといっていいほど見当たらない。おそらくこのあたりが道であろうと思わしきところを伝ってゆくも,確証が全く得られない。初めは膝までだった藪もいつしか背丈近くまで伸びてきており,野薔薇の低木に指や脛を刺され,手指は傷だらけになり,とんでもなく大変な目に遭ってしまった。途中で少し道のようなものが現れたかと思ったら,これは水を海に流すための沢のような用水路であり,結局これを3回渡る羽目になった。ここに出てしまったあたりからもはやパニックになっており,前しか目指せない猪状態。「沢」を飛び越え,どうにか防風林を抜け,最後の藪を掻き分けると,ようやく視界が切れ,目の前に広大な海,眼下にはS字に曲がる鉄路が姿を現した。しかしS字の線路の曲がり具合は思ったよりも緩やかで,どうやら作例のある「正解」はもう少し南側のようだ。この時点でとんでもない発汗量と疲労。あまりにも無理を強いてしまったこと,途中で少し置いて行ってしまったこと,そして蜘蛛が苦手なこともあり,最終的にはヨメ氏に思いきり叱られた。無理もない。大変申し訳ない気持ちである。

息を整えて,深い藪を撮影のために「整地」。場所としては断崖の縁で,3歩先は急勾配,もしくはもう地面がない。整地作業中に何度も足を取られて尻餅をつきながら,アングルの邪魔になる背丈程度の雑草を避けてゆき,ようやく視界をクリアにすることができた。

3524Dは悠々とファインダー内に現れた。

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苦闘の末に開けた視界は,この世の物とは思えぬほど色鮮やかで,ただただ美しかった…。

 

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恐らく,完全なるオリジナルアングル。苦労も全て吹き飛ぶような「ご褒美」だった。 

 

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眼下の海は,惚れ惚れする濃青色。

 

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冬は荒れ狂い,夏は鮮やかに空を写す。この表情の豊かさが,日本海の魅力である。

そして,この圧倒的な自然しか存在しない景色の中に,鉄路が敷かれている。その絵を目の当たりにすると,何というか,「奇跡」だとしか思えないほどだった。

 

さて,先人が至った正解の場所は一体どこだったのだろう。あるいは正解などなく,誰しもがオリジナルアングルに到達するのだろうか。次の列車までの間に,薔薇の類を再び避けながら藪を漕ぎ,少し南側へと移動し,視界が開けそうな場所を探した。50mほどで,新たなアングルを発見。とりあえずこれ以上南側に行くのも気力・体力ともに辛い。ちょうどこの場所で,南側と北側の視界がほぼ綺麗に開けており,頑張れば両方向を欲張って撮影できそうなので,ここで次の2529Dを撮影することに決めた。

 

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追良瀬から,驫木に向けて,列車はひょっこち姿を現した。

 

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人を寄せ付けぬ険しき断崖の向こうには,こんなにも美しい世界があるのだ。

 

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日本離れしたスケール感に,圧倒される。 

 

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もう一歩前に出れば数十メートル下まで滑落するであろう,防風林の縁に我々は居た。

太陽は少し雲に隠れてしまっていたのだが,十分な雰囲気があった。 

 

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そして振り返ると,雲間から太陽が覗き,スポットライトが列車に降り注いだ。

 

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撮影はすべて,一期一会である。自分を含め誰にも,ここに至ることも,この景色を拝むことも出来ないのではないだろうか。

ここの探訪は全くもってお勧めできないので,この記事を見て行こうと思った方は,是非思い留まった方が良いと書いておこう。

 

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列車はするすると,非電化区間ならではのジャストサイズのトンネルに吸い込まれていった。

 

復路はやや往路よりも楽な道を通り,未舗装道路まで戻った時には,Tシャツは水に浸したばかりのようで,ジーンズもどきのボトムスは脛の部分に塩がこびりついた状態で体に纏わりついていた。想像の5倍の労力を要する撮影は,ここまでくると流石に「やりすぎ」であり,よくも悪くも記憶に残る形となったのだった。

 

その12へ続く。

 

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