2019年12月25日,山梨県・塩山。出張前の1時間半を観光に充て,恵林寺(えりんじ)を14年ぶりに再訪。
もうまもなく,仕事の取引先が特急かいじで塩山駅に到着する時間である。標高差70mの緩斜面を,お馴染みの電動アシスト付き自転車で下る。恵林寺からほぼ漕ぐことなく戻ってきた。駅まで残り1kmのところで,向嶽寺に立ち寄る。
向嶽寺(こうがくじ)は山号を塩山と称す,臨済宗の向嶽寺派の本山である。
参道を1分ほど歩いくと,中門(なかもん)が行く手を阻むように建っている。一見すると地味なのだが,室町期の貴重な遺構で,国指定重要文化財であるという。恵林寺に続き,四脚門の重要文化財を2つ見たことになる。左右に取りつく築地塀は県指定文化財だとか。
この右手の通用門から回り込むと,仏殿が姿を現す。
威圧的にすら見えるシルエット。ザ・禅宗様の仏堂に見える。
美しく整えられた境内に一人で居る寂しさとはミスマッチの,鮮やかな青空と輝く銅板葺の屋根。撮影も現像も一苦労であった…。
正面から見る分には普通の仏殿なのだが,横から見るとこのようなシルエット。後に開山堂が付属して(というか一体となって)いるのだ。ホームページによると「合棟仏殿開山堂」と「由緒記」に記されていると言う。市指定文化財としての名称は「仏殿兼開山堂」のようだ。
寺院建築あるあるで,写真に納めてしまうとスケール感が狂ってしまう。木割により寸法体系,部材の比率等が決まっているので,多くの物が相似形なのだ。点景を置き,見る側(後日見返す自分も含め)に想像を委ねないことには,対象の建物の正確なサイズが表現できない。特に大きいものは猶更である。実際,この仏殿兼開山堂もかなりの規模の建築である。見えている柱の高さは6m程度だろうか。
修行のための場であり,公開はされていないのだが,開いている窓から中を覗くことは出来る。側柱で6m,外陣・内陣の柱はさらに長い。そして華奢である。
つい専門家の目で構造面をジロジロと見てしまうのだが,どうやら近年補強を入れているようだった(写真の画角外,右側の壁は恐らく補強が施されているように見受けられた)。
天井画には龍。作者・制作年代は不明であった。
さて,クリスマスの小さな一人旅は早くも終わりである。ぐるりん号を駅前の駐輪場に返却して,社長・取引先と合流。つい先程到着した特急に乗車していたような顔をしながら,皆で出張へと向かったのだった。