梟の島

-追想の為の記録-

松本建築散歩(1):大手1~3丁目に残る,味わい深い建築たちを紹介。

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魔窟感。 2018.01.06 松本・大手2丁目

 


2018年1月6日。博論執筆の中休み,年始早々に長野旅行へ。実に久々に18きっぷを使い,6時35分八王子発松本行き・429Mに乗車。211系のロングシート車が来るか,ボックス車が来るか。長旅の快適性を大きく左右するが,入線するまで分からないこの二択,幸い運よくボックス車が来て一安心である。2ヶ月ぶりに長距離鈍行列車に揺られること3時間40分,松本駅には10時16分に到着した。 

まずは駅東側,松本城方面に散策しながら,道中の街並みを見て回る。

 

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駅前の藤屋のビルに,地方都市らしさを感じ,早速レンズを向けてみる。異郷の地に降り立ったことを実感した。天気は申し分ないが,光線が強く,建築物の撮影はやや難しそうだ。

しばらくは市街地ど真ん中なので,目を引くものは見つからず。女鳥羽川(めとばがわ)を渡ると,大手2丁目。いよいよ古い街並みが姿を現した。

 

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手塚屋,仏壇店である。火灯窓,丸窓にペディメントという,不思議な和洋折衷っぷりを見せる。

そして,女鳥羽川の北を東西に走るこの道は,六九商店街というらしい。

 

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手塚屋のすぐ東の斜向かいには,旧上原薬局。現在はミナペルホネン松本店である。ストリートビューで確認したところ,2012年時点では1階部分もモルタル仕上げだったので,緑のタイルは近年のもののようだ。遠目に見ると銅板のようなタイルは,上下でうまく調和しているし,2階のレリーフは程々な華やかさをファサードに与えており,全体としてとても美しい。

 

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同じく六九商店街,旧上原薬局の少し東側には,肩身が狭そうな佇まいの靴店茶店

下調べ不足だったので,今町通り信号近くの山屋商店をチェックし損ねてしまった。探訪の際は女鳥羽橋から川を渡り,今町通り信号から東に向かって散策すると良いだろう。

 

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六九商店街の一本北の道。何の店舗だったのか分からないが,ストリートビューで確認すると,探訪の半年後には解体されてしまったようで,残念である。

 

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同じ道を西に歩くと,地図上は「倉田ゴム工業」の建物がある。ガラスには恐らく「倉田タイ ヤ電機部」と書かれていたか。

 

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写真の歪みではなく,建物の歪みのほうが大きいようだ…。

 

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倉田タイヤの更に西にも,渋い佇まいの和風建築。

 

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こまくさ道路に出て,今町通り信号とは逆方向,北に向けて歩いてゆくと,大手1丁目側にカフェ・ラボラトリオの入った看板建築が現れる。調べたところによると「旧宮坂薬局」,竣工は1933年まで遡るのだとか。3階建ての看板建築にはなかなかの迫力を感じる。2階の窓は何だかアンバランスな印象だが,3階部分,5列の縦長の窓は繊細で素敵である。往時は1階部分が歩道側に張り出しており,より厳かな雰囲気を醸し出していたようだ。

 

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こまくさ通りから1本東の道の,犬飼歯科医院。年始らしいエレメントも。

 

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そして東に進み,この「魔窟」に到着する。3階建てなのだろうが,2階の階高の低さたるや…。

 

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中はスナックだらけのようである。

 

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裏手にまで展開する店舗たち。客層は…そして店員は…想像の域を遥かに超えている。

 

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黄色の電球に囲われたピンクの看板に書かれた店名は平仮名。このチープさが昭和であり,平成初期である。

 

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魔窟の中は特にフォトジェニックではなく,普通の住家のよう。何か起こっても怖いのですぐに引き返した。

 

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大手2丁目と3丁目のちょうど境界には,「塩井乃湯」。煉瓦塀も印象的だ。大正時代の建築だとか。

 

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右から書く文字が残っているだけでグッとくる。コーニスにはギリシア雷紋。

 

松本・大手1~3丁目。僅か数ブロックの中に,良い出会いが沢山あった。

 

その2(松本城,縄手通りと中町通り編)へ続く。

 

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