静かな朝。 2021.11.04 松山旅館
11月4日(木)。酒田の現場調査である。前日は羽越本線沿線の集落をひたすら巡り,夜21時に酒田の松山旅館に投宿した。
▼その1はこちらから。
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朝6時半すぎに起床し,館内を見て回る。
昨晩は真っ暗だった廊下。
突き当たりの先にも廊下が続いていた。大きなお多福窓,実に素晴らしい。昨晩,風に吹かれてガタンガタンと鳴っていたのは,ここの窓だったのかもしれない。
さらに右に曲がれるようだが,荷物が置かれていて先には進めず。
床板。
部屋に戻り,今度は玄関側を見る。丸窓から入る朝の光が綺麗だ。
陰翳の美。
角部屋の横の小窓。
中庭に,秋の朝。
曇ったガラスからの眺め。
階段を下る。7時にお願いしておいた朝食ができたようなので,広間へ向かった。
建物と同様に年季の入った机の上で,クラシカルな朝食を頂く。どれもびっくりするほど美味しかった。ボリュームも十二分で,しかもすぐ横でご主人が(昨晩と変わらぬ調子で)話しかけてくれるので,平らげるのに意外と時間を要するほどだった。
ご主人の自慢の人形を見せて頂いた。ご主人は嘗て遊郭であったことをとても誇りに思っていらっしゃり,それが何だか嬉しかった。
砂潟。酒田の旧表記の一つである。
途中でご主人は市役所に行くといって出掛けてゆき,その後は女将さんが優しくもてなしてくださった。
他に客は居ないとのことで,朝食の後,館内を撮影させていただいた。
廊下。
洗面所。
洗面所の横の窓が開いたので,中庭に面する部分を撮る。
廊下に面した部屋。
角部屋。
このくらいの小ぶりな部屋に泊まるのも悪くなさそうだ。
ディテール。
朱色が目に鮮やかだ。
泊まった部屋の奥の部屋へ。広さもあり,立派な設えである。
松葉組子の欄間。
2面開口の角部屋。
廊下から細く伸びる階段は,2階の一部屋にだけアクセスできるという造りだった。部屋は物置のようで,客室としては使われていなかった。
女将さんに声を掛け,大広間へと上らせていただいた。
外観。
朝陽が差し込む。
ソファーのある階段室。
妓楼らしさを残す。
大広間へ。立派な柱が垂壁を支える。
横の部屋。
いつかの活況に耳を傾けながら,静かな広間にはシャッター音のみが響く。
テレビと時計が,この部屋の現在の住人。
鼠漆喰仕上げの垂壁。
朝の美しさにうっとりする。
窓からは,小さな秋が見えた。
もっとのんびり過ごしたいところだったが,残念ながら出発の時が来た。
玄関には,昨日寝屋で見掛けた引綱があった。
凧。
最後に外観。
大変親切にもてなしていただいた。また機会があれば是非訪れたいと思う。駅から徒歩だと少し距離があるが,この記事を読んだ方も,庄内を訪れる際はぜひ宿泊を検討してみてほしい。
さて,想像以上に館内に見所が多かったため,危うく調査の集合時間ギリギリになってしまった。予め見繕っておいたガソリンスタンドで給油を済ませ,レンタカーを返却。無事に時間通り合流し,現場調査へ向かった。
調査はほぼ終日を要した。全てが終わる頃には日はとっぷりと暮れてしまっていたし,昨日からの疲労も蓄積していたので,調査後の散策はせず,帰路も取引先の方に駅まで送って頂いた。
時間や気力体力が許すのならば,下り列車に乗ってしまいたいくらいだったが…。いつか酒田以北もまた巡ろうと思う。
駅前にコンビニが無いので,NEWDAYSでパンと酒を買い込み,18時頃の653系のいなほ号に乗車。新潟までは2時間の旅である。昨日巡った集落を車窓に眺めながら,疲れた身体には酒が染み渡ってゆく。椅子に浅く腰掛けて身体を寝かせてみて,あけぼのの雰囲気に少しでも近づけようとしてみたりしたが,全く上手くいかなかった。
村上でデッドセクションを越える。ほんの一瞬とはいえ,保安灯のみの薄暗い視界とモーター音の無い静かな走行音が,夜行列車の趣を思い出させてくれた。
酒を飲み終えた後は少しウトウトとしていた。新潟に到着し,重い身体を起こしてホームに降り立った。上越新幹線との乗り換えは,改良工事により随分と簡単になっていた。
上越新幹線で,東京までさらにもう2時間。酒田から帰宅するまでにちょうど5時間を要した。夜行なき今,庄内はすっかり遠く感じられるようになってしまったが,この先も大好きな場所であり続けることは間違いない。来年度も酒田の物件の現地確認が入る事が予想されるので,今から楽しみである。
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