梟の島 -叙情的叙景詩-

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中野駅北口(7):「最後の散策」,街と記憶を記録する。

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見慣れた景色。 2021.12.23 中野駅北口

 


12月23日(木)。3年住んだ中野を去る日が,とうとう来てしまった。

午前中に引越しの荷物を見送り,空っぽになった部屋を発つ。電車でトラックを先回りし,新居で荷下ろしに立ち会った。一息ついた後,カメラ2台と鍵とクリアファイルだけを持ち,再び中野へと出発した。

遂にこれが,中野に「帰る」最後の機会である。地元民として街をどのように見てきたのか,どのような記憶が堆積しているのか。そして最後の日に,自分はどんな景色を見たのか。ここから2つの記事で,これらを記録に纏めてゆこうと思う。

 

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中野駅北口の改札を出る。お世辞にも綺麗とは言えないトイレがあり,人通りの少ない一角。芸術性があって利便性は無い,駅徒歩0分のボイドのような空間である。

 

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鳩の多い駅前広場。嘗てはここにバスのロータリーがあり,野方行き(当時は「野方駅」ではなく「野方」表記だった)のバスが良く停まっているのを,中央線の車内から良く見下ろしたものだ。

住んでいた3年間では,選挙演説を良く見掛けた。某党の某党首を見た事もあった。あの日,このちっぽけな広場を埋め尽くしていた聴衆の顔のことを,ふと思い出した。彼らの顔には,一切の「人相」が無かった。表情というものが存在していなかった。熱狂するでもなく,もちろん敵意を込める訳でもない。微動だにせず沈黙して一方向を見る無表情の群衆を見て,底知れぬ恐怖を感じた。

 

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あまりにも見慣れた,駅前の景色。

 

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ドコモのビルと,区役所と。

 

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この街の象徴,サンプラザ。空が広く,青い。

 

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開発を控え,何となく間延びした空間が広がる駅前。

コロナ禍に入り完全在宅勤務となり,駅を利用する頻度は少なくなった。南口の歯医者に通っていたので,遅刻ぎりぎりでここを小走りで通り過ぎることが多かった。直近だとこれが最も鮮明な記憶である。またある日は,ブルーインパルスの通過をここで見送る人々を後目に駅へと歩いた。当然ながら殆どが中高年であった。

 

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区役所で,転出の手続きを行った。

なお区役所は,ここから少し北西,嘗て体育館があった場所に新庁舎の建設が始まっており,2024年の移転が決定している。

 

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転出届を背中にしまい,再びカメラを首と肩にぶら下げる。先程よりも少し陽射の色が黄色く,光が落ち着いていた。

この道には金木犀が植えられている。金木犀はちょうど私の誕生日の頃に咲くので,単なる秋の風物詩としてではなく,ちょっとした親近感のようなものをも感じてしまう。

 

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さて,まだ時間に余裕があるので,最後に街を歩こう。

 

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いつか懐かしむことのできるように,当たり前のものを記録する。

 

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まだ15時だが,冬至を過ぎたばかりの太陽と長い影が,日没を意識させる。

 

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冬枯れの桜並木。

 

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サンモールに入る。人通りは絶えない。

 

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出先用の防水靴,ランニングシューズ(長いこと気管支を患っているので,残念ながら走れてはいない)などは,このダイワで購入した。

 

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街角のパン屋。サービスパックが350円だった時期には,よく食べていた。少し前から値上がりしたので購入頻度が落ちたが,転居の前,最後に一度買って食べた。

 

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つい先週も夜に歩いた,三番街へ。

 

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青が目立つ。

 

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似たような景色の多い街の中で,この角のビルは妙に印象に残っている。

 

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ふれあいロード。この時間はまだ人通りが少ない。

 

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狸小路との交差点。

 

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ふれあいロードは,緩やかな坂道。

 

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白線通りの入口,可愛らしい街灯。冬の空,白い雲が眩しい。

 

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一箇所一箇所,見納めのつもりで歩いて回る。

 

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何度見ても不思議な平面構成である。このルーズでルールの無い形。意図していない限り迷い込むことのない,亜空間である。

 

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その最奥部にあるのがワールド会館。この街はシンボルが多くて素晴らしい。

 

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ホテル時代の名残,ディテールの愛らしさ。

 

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ホテル営業を再開できたりしたら,きっとかなり賑わったと思うのだが…。

 

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階段の立入禁止範囲が広がり,もう見納めになってしまうのかもしれない雰囲気だった。いつ見ても魅力的な,70年代のオーラ。80年代以降の日本では決して生まれなくなってしまった,豊かでどこか知的な雰囲気。一日でも長く此処に在って欲しいと願い,別れた。

 

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力士。

 

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仲見世。この「仲野」と「力士」も入っておきたかった…。いつか機会があれば,元区民として訪れよう。

 

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青空と黄色い街灯,中華料理店の赤色。

 

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白線通りは赤茶色の印象が強かった。

 

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そして聖地,ブロードウェイ。地元民としては,西友やドラッグストア,八百屋,肉屋,魚屋のある,生活の拠点だった。立体マスクを安価で売っている店が1階にあり,転居前に何箱か買っておいた。写真右側はサンモール商店街,オーエスドラッグはコルゲンのうがい薬が安くて重宝した。

 

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この一角は特に,数えきれないほど通過した。このまま背面側に抜ければミスドがある。

 

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ブロードウェイ脇の駐輪場。

 

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鈍角でクランクする狸小路を,サンモールから覗く。

 

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靴屋と薬局の多い商店街。

 

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文具店。ここでも何度か買い物をした。

 

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五番街。眠たそうに街灯が点っていた。

 

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三番街を西に抜ける。

 

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立体的なアーチ。

 

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一つ一つのディテールに挨拶をするように,撮影していった。

 

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中野通り。

 

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青空と白い箱。

そろそろ退去立会いのために,「最後の帰路」に就こう。

 

後編へ続く。

 

 

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