2020年6月11日,木曜日。午前中は日暮里で打合せ,午後は入谷で現場調査。徒歩移動の間に,街並みを見て回った。
尾久橋通りから斜め左方向に外れ ,荒川区と台東区の境を東に歩いてゆくと,左手に香ばしい路地が見えた。
ぎりぎり荒川区。良い路地だ。
トタニズム,木造の古家。
台東区,根岸4丁目の細い路地にて。
根岸柳通りをひたすら東へ進む。金杉通りとの交差点の手前に,雰囲気のある看板建築を発見。
晩春と初夏の狭間,若い柳の枝が印象的な一角だった。
金杉通りを南下する途中,右手の袋小路に何かの気配を感じる。近付いてみると,コンクリートブロック造の不思議な建物だった。ほぼ死角にあった名建築に嗅覚で辿り着くことができた自分に,暫し悦に入る。
4枚の引き戸。
しかしこの中途半端に伸びた梁やスラブは,何を迎えにゆこうとしていたのだろうか…。
刻まれる年月。ブルーグレー×錆はいつでも至高。
この日のメインディッシュは,鈴木食品工業の看板建築。Twitterで解体工事のお知らせが掲出されているという近況が偶然目に入り,偶然にも近くを通る機会を得た。見に行かない手は無い。
生意気な風貌のレクサスがずっと停車中で,その点のみ残念であった。
側面。
背面の路地。
最後に正面。良い雰囲気だったが,あまり引きが取れないのが難しかった。
また一つ,都内の看板建築が失われてしまったが,最期に立ち会えたのは良かった。
根岸三丁目の信号で金杉通りを離れ,東へ向かう。地名は台東区下谷になる。
風が吹くと,千切れた装テンがパタパタと靡き,銀杏の大木の枝が鳴る。太陽は強く照り付け,青空は淡く突き抜ける。すっと感性を研ぎ澄ますと,まるで自分が真夏の地方都市を歩いているかのような,そんな感覚に陥る。久しぶりに非日常を疑似体験して,嬉しかった。
太陽が陰れば,また表情が一変する。
建具も美しい。
2階は1間ほどセットバックしているが,雨戸の戸袋は銅板だろうか。とても手の込んだ造りで,惚れ惚れする。
ファサードの向かって右側には,木製の扉。
また逢えるだろうか。
向かい側にも,香ばしい雰囲気の漂う一角。台東区,なかなか奥が深い。また機会を見つけて散策してみたいものである。
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