小浜の文化財建築を巡る旅も午後,ここまでは数多くの古刹を「ハシゴ」してきた。
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萬徳寺を出て,流石に空腹に堪えかねて昼食を…コンビニで済ます。旅先に来て食事を疎かにすることの多さたるや,何時までたっても学ばないが,今日はもうこれで良い。
食事後は,再び小浜西組方面へ。明治元年に建てられたという旧料亭建築,蓬嶋楼。元茶屋町の三丁町の中でも最大級だったこの建物が土日限定で公開されているというので,見学することにした。ここまで連続して寺を見てきたので,一度ここで趣向を変えようという考えもあった。
三丁町の北,海岸沿いにやや大きめの駐車場があるので,ここにレンタカーを停め,歩くこと3分ほどだろうか。朝に下調べという形で街歩きもしていたので,すんなり到着。
既に一人先客がおり,我々の後ろにも一組の来客があったので,この3組・5人に対して,ガイドの方が説明をしてくださった。一先ずこのガイドの方の雑談の長さには悪い意味で驚かされたが,まあ旅先ではこんなこともあろう,思い出にはなったので良しとする。
建築的には,一部二階建ての近代和風建築で,後から増築された部分もあるらしい。
公開範囲内で最も強く印象に残ったのは,やはり大広間の「満月」・「三日月」をあしらった壁の意匠である。
満月と三日月が対になるということだ。
縁桁に用いられている北山杉の一本材。これで家が建つほど,凄まじい値が付くらしい…。
男女の便所の境にある小窓の造作,そして床柱の省かれた床の間(記事最上部の写真)といったところも目に留まった。
建物のみならず,調度品にも並々ならぬ額が注ぎ込まれたようで,それはそれは「金のにおい」のするものばかりであった。
木製の「シャンデリア」。
近代物ならではの芸の細かさがやはり光っており,先述の満月・三日月は勿論,左右を入れ替えてもと異なる柄として成立する組子障子や,松葉の模様の欄間飾り,お馴染みの丸窓,木製の照明器具など,至る所に遊び心を感じさせるものが散らばっているのが実に有機的で良い。
結局のところ,こういった人の手による「技」や「手間」,すなわちその空間を作るにあたって注がれた熱量を,その場で無意識に感じ取って評価しているのだろう。
単純に「古いから」というロジックではないのに古い物に惹かれるというのは,こういった温かさやドラマがそこに当たり前のように存在しているからなのだ。
羽賀寺へ続く。