梟の島

-追想の為の記録-

羽越・磐西撮影旅行(2):羽越本線キハ40,惜別乗車。

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小休止。2020.01.11 羽越本線 今川駅

 

■0558村上発酒田行,821D。村上→鶴岡

列車は村上を発ち,未だ明けぬ夜をひたすら疾走してゆく。岩ヶ崎のカーブを右に大きく曲がると,進路を北に取り,車窓は西を向く。すると,ちょうど雲の間から西の空に低く掛かった満月が顔を覗かせ,その月光が日本海の黒い海原に,優しく黄色く映り込んでいた。

 

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他に明るい物のない車窓にただひとつの光源,それが満月であり,日本海の細波を照らしている。時間にしてみれば1分足らず,油断していれば見逃してしまうかもしれない,この絵画のような情景。トップスピードで走る列車からほぼ漆黒に近い景色を,ごく短時間のシャッターチャンスで撮影するのは困難を極めたが,スライド式の窓を持ち上げてどうにか一枚,その雰囲気を精確に残す絵をとらえることが出来た。こうしてこの旅の一つのハイライトはいきなりやって来た。

 

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この先も車内のスナップショットを撮ってゆく。こういった自由な,ある種気楽な鉄道撮影というのも,かなり久々なものであることに今更気付かされる。願わくば両側2×2のボックスシートが良かったが,この際何を言っても仕方ない。

 

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座席,座席番号のプレートと網棚,窓のロックの金具などを撮ってみる。最近は他人の写真を浴びるように見ており,何かしら自分も挑戦してみたいという思いが強くなっていたこともあり,未だ夜明け前にもかかわらず早速「カメラ脳」になっていた。

 

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今川駅では特急との交換待ちのために暫し停車。ややRの小さな左カーブに身体を傾けて停まるキハが,ようやく白みはじめた空の下,駅の微かな灯りに照らされて一休みしている。

 

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車内の蛍光灯の光が窓から漏れ,ホームを柔らかく黄色く照らす。ここも手持ちの撮影が難しかったが,切り取り構図などを複数試して,物にしてゆく。

上りのいなほが通過してゆき,再び車内に戻ると,程なくして列車は再び北へと走り出した。すると丁度6時半になり,街のチャイムが鳴る。未だ空は冷たい青灰色,日の出前だが,もう立派に朝である。こんな所にも旅先の日常の1ページを垣間見ることが出来て,嬉しくなったのだった。

笹川流れを通過してゆく頃に,ようやく空が明るくなり,海岸にごろごろと転がる巨岩の表情もよく見えるようになってきた。鼠ヶ関,あつみ温泉からは学生を中心とした乗客が空席を埋めていった。五十川を過ぎると長いトンネル区間を経て,小波渡。愛らしい駅舎はいつも必ず視認したくなる存在である。小波渡から下り線は海側をぐるっと大きく回り,三瀬の町を経て,いよいよ日本海に別れを告げ庄内平野へと飛び込んでゆく。

 

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羽越本線陸羽西線も,庄内平野に入った途端に視界が大きく開けるのが実に面白くて好きである。

羽前水沢を過ぎると,雨の予報に反して東から太陽が微かに顔を出し,ごく浅い角度の陽光が列車の影を枯れた田圃に長く淡く作り出した。

 

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そんな様子をスナップ写真に収めてゆくと,列車は程なくして鶴岡に到着。

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すれ違いとなる上り列車,822Dは青の4連だった。

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ホームでは上下線の普通列車が並ぶことはないので,それぞれを撮影し,それぞれを見送った。

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こうして村上からの1時間40分の惜別乗車は,感傷的になる間もなく終わってしまった。

 

その3へ続く。

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