梟の島

-追想の為の記録-

褐色の夢

 

ひんやりとした隧道を抜けると,視界が大きく開けた。見渡す限り人の気配は無く,左を振り返ると低く差す太陽が眩しかった。正面には砂岩の露出した尾根道が真っ直ぐに伸びていて,1kmほど先に壁のように聳える黄褐色の山塊の割れ目に,突き刺さるように飲み込まれてゆく。地層が露わになっているのか,或いは嘗て採石場だったのか,切り立った岩壁には太い横縞が等間隔に描かれている。

視線を近くに移すと,尾根道の両脇にはなだらかな斜面が続いていて,100mほど標高の下った所に,埃っぽい色をした荒れ地が広がっていた。ごつごつした岩の角と疎らな灌木が,黄土色の上に鋭い影を黒々と伸ばしているのが見える。左右の荒れ地は無辺に続き,ディテールの欠損した低い山地によって遠景が甘く縁取られている。2つ並んだ噴火口の狭間に立っているようにも思われたが,地形を構成する岩石は明らかに火山に由来するものではなかった。水の存在は感じられず,目に入る全てのものが極限まで乾燥していて,風が吹くと砂煙が舞い,景色が微かに霞む。晴れた夕空は,くすんだ青に仄かな緑色を含んでいる。


そうか,此処だったのか。

そう思ったところで目が覚めた。

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