喜多方にて,冬季の祝日に訪問可能だった4つの酒蔵を巡りました。
東北の日本酒が大好きな自分にとって,また日本酒好きのヨメ氏にとっても格好の機会ということで,鉄道撮影で疲弊した身体で会津の酒を楽しもうという計画。歯に衣着せず,思ったままを,探訪順に書いてゆきましょう。
■清川酒造
1軒目にして貧乏くじを引く。旅先でここまで不愉快な思いをしたことは無い。店主は終始我々を遠ざけて,常連の爺さんの相手をしている。蔵の見学も,付き添うどころか,案内する気もゼロである。我々を客と思っていないようだ。こちらから声を掛けて試飲させてもらう。まだ一軒目の蔵であり,いきなり大きな買い物は出来ないので「また後で来ますね」と,普通の挨拶をして店を出ようとすると「来なくていいよ,うちは分かる人にだけ分かればいいから」と店主。こんな言葉を客に捨て台詞として店主が投げかけるような店は,「国酒」かなんだか知らないが,時代の波に飲み込まれて潰されてしまえば良い。観光客,特に若い人は行くべきでない場所である。たとえ日本酒が好きであっても,自分の愛想が良くても,だ。年齢だけでナメられた感がある。
酒造りをやめた蔵の展示も,はっきり言って投げやり,ほったらかし,「残骸」といった様相である。
過去にTV出演した際の写真や,出典の分からない短歌,歴代首相の色紙がいくつも自慢げに飾られており,お世辞にも趣味がいいとは言えない。「天狗」感が至る所から滲み出ているようにすら感じる。廃墟を趣味にする自分ですら,見所や撮り所が無かった。
■大和川酒蔵(北方風土館)
清川酒造で不愉快な気持ちにさせられたが,続いての大和川酒蔵は対照的に,とても素晴らしかった。20代前半の女性ガイドが,若干たどたどしくもハキハキと,展示の説明をしてくれた。現在の酒造りは「飯豊蔵」という新しい場所で行われており,ここは展示と販売に特化した施設となっている。
江戸蔵は日本酒の酒造りに関する基礎的な説明が丁寧になされている。
中央に掛かる桁が一本材だという。
江戸蔵から続く大正蔵の一部は,展示スペースとなっており,ワイナリーのよう。なかなかな気合いを感じられた。
その後には蔵内部の「テイスティングルーム」で,看板商品「弥右衛門」の様々な種類を惜しげもなく試飲させてくれた。定番商品である純米や辛口は東京でもお目にかかれるので,ここではちょっと上のランクの物を飲ませていただく。同じ銘柄でもこれだけ味にバリエーションが出ると,もはや銘柄の名称が何を指し示しているのか,その名前だけで呼ぶことの意味が果たしてあるのだろうかと,根本的な所に疑問を抱くほど,千差万別で,そしていずれも美味であった。もはや日本酒ではないような「カスモチ原酒」が最もインパクトを残したのだった。
■小原酒造
伝建地区の中に建つ。街並みは思ったほどフォトジェニックではなかったが,小原酒造の外観はなかなかにくたびれていて,雰囲気は抜群に良かった。
建築物としてメンテナンスが必要なレベルになっているのは気掛かりであったが,中に入ってみると,ここはどうやらクラシックを聴かせて造る酒「蔵粋(くらしっく)」がメイン商品らしい。言葉を濁さず言えば,「やっちまった」感がする。その割にと言うっては何だが,人気商品は幾つか売り切れだった。商売としては成功しているのだろう。幾つか試飲した後,小瓶のにごり酒「白霞」を購入した。後日,親友宅でこれを飲むことになったが,なかなか落ち着いて雑味が少なく,美味だった。
■喜多の華酒造
比較的時間はタイトになってきていたので,残り時間の計算を行い,4番目の酒蔵である喜多の華酒造へ。ここは数ある酒造店の中でも最も駅に近い場所に位置しており,大通りからは離れているためアクセスは若干分かりづらいのだが,ヨメ氏のナビですんなりと到着。酒蔵は現役であり,この時期は仕込みが始まってしまっており見学は不可能とのことだったが,とても親切丁寧に対応してくださった。とても気前よく,試飲も6種類ほどさせてもらったが,相性が良いのか,とても好みの味と風味で,どれも美味である。香り,甘さ,キレ,どれかに偏重することなく,かといって引きすぎる事もなくむしろ華やかな印象だ。ヨメ氏もとても気に入ったようで,定番商品にはなるが,緑色の瓶に紫色のラベルが特徴的な喜多の華・純米吟醸の四合瓶を購入。最後の最後に,実に良い出会いであった。実を言うと初めはあまり期待していなかったのだが,行ってみればここが本日一番の思い出になった。
自宅にて,今回の土産のカップ酒2種と,ふるさと納税で酒田市から到着した2本,そして喜多の華・純米吟醸を並べる。期せずして「緑コレクション」となった。
■総評
本日巡った酒蔵の個人的な順位は,
1:喜多の華酒造
2:大和川酒蔵
3:小原酒造
4:清川酒造
である(googleの★の数と一致しているかもしれない…)。率直に言えば,前予想と真逆のランキングになった。時間に限りがある方は参考にしていただきたい。そして,特に観光で訪れる場合は,2→1がおすすめの順序である。大和川酒造はかなりオープンな観光地で,かつ対応も丁寧であったので,もし1で好みの出会いがなければ,2は土産の調達のために再訪するのにも全く抵抗を感じないだろう。
一日を通して,普通酒の小瓶やカップには出会えなかったのは少し残念だった。やはり一升瓶で,地元向けに販売するものが主のようだ。喜多の華酒造の方も,やはり採算の面から小さな単位の普通酒はなかなか無いという事を言っていた。旅先でカップ酒を調達するのがもはや一つのルーティーンになっている自分からすると少々残念ではあったが,それでも一日を通して充実した「ハシゴ酒」となった。
その20へ続く。
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