錦秋に溶ける。2017.11.13 吾妻線 羽根尾~袋倉
今から2年前,2017年の秋の想い出。
11月13日は,博士論文の提出予定日であった。しかしどう考えても間に合う筈のない惨憺たる進捗状況で,数週間前に完全にエンジンストールし,全くの無気力状態に陥っていた。そこでこの日の朝,いつもと全く同じ列車に乗り,その足で研究室ではなく,吾妻線の大舞台の撮影へと急遽向かったのだった。
お立ち台の有名撮影地には,平日にも関わらず既に十人以上の先客がいた。我々に見守られ,そして燦燦と注ぐ陽光の下,紅葉に溶けるような湘南色を纏った115系が姿を現した。
撮影を終えて,先人はみな帰って行った。自分は特に何もすることがないので,この丘の上の墓地の傍らにある撮影地で寝転がり,秋風に吹かれながら,何も考えない時間を過ごした。指導教員からの電話も無視して,ただ燃えるような景色を眺めながらぼうっと,心が穏やかに解放され,傷が癒えるのを待った。
次なる上り列車は,丘を降りたところから,少し望遠で切り取る。耳に心地よい唸り声とともに,鋼鉄車が紅葉の森を抜けてきた。
紅葉から飛び出す。2017.11.13 吾妻線 袋倉~羽根尾
程無くして,211系の下り列車が通過していった。
銀色の侵略者。2017.11.13 吾妻線 羽根尾~袋倉
この折り返し列車に乗って,東京へと戻る。今思えば極めて贅沢な1日の使い方であるが,この日の自分にはこれが限界であった。こんなスナップショットを撮る気力は持っていたらしい。
高崎駅では,最後に115系を見送る。これがJR東日本の115系6連との,最後の対面となったのだった。
さらば,群馬の主。 2017.11.13 高崎駅