8月21日は朝から別府市街で近代建築を巡り,竹瓦小路に寄り,その後は「夜の街」の朝の様子を撮影してきた。中津に向けて出発したが,その道中で木造アーケードを奇跡的に発見。車を停め,ネットに殆ど情報のない市場跡を撮影している。
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ちょうど路地の奥にお爺さんの姿が見えたので,話しかけるべく,奥に進んでゆく。
前編で記した「メインストリート」から少し通り芯がずれた格好で,裏通りまで歩いて抜けられる路地。キッコーマンソースの看板の黄色が,褐色の世界で一際目立っている。
玉う登゛ん・中華楚者゛。
先程見えたお爺さんはこの「つるや」の店の方だった。その後,店のおばあさんにも話を聞くことが出来た。ここは嘗て「標準市場」という名前だった。つるやは今なお現役だという。他の店舗は殆ど閉店して久しく,一斉にというよりは,一店舗また一店舗と徐々に店を畳んでいったらしい。
看板はさらにもう一つ。アーケードのトラスも美しい。
押麦や雑穀。時代的には奈良の椿井市場に近い,戦後すぐの雰囲気だ。調べると標準市場は1950年に開設されたという情報があったが,恐らく年代としては間違いないだろうし,名称から推察するにここは公設の市場だったのだろう。
路地を奥に抜けてゆくと解体中の住宅があった。
アーケードの架構について,おばあさんは,解体する費用もないこと,その手配をする若い人間がいないことなど,消極的な理由を幾つか挙げていた。それでも雨を避けられるのはやはり便利であるとも言っていた。
現代までこの姿を保って残っていてくれたこと,そしてその「現役」の姿に出会えたこと,更に住人の方の貴重なお話まで聞かせてもらえたこと。撮影に対しても好意的であったし,とにかくすべてに感謝である。
路地を抜けてゆく。
解体中の住戸のところでは,仮設の柱で小屋を受けていた。この後ろに少し進むと,あっという間に216号線に平行した裏の道路に突き抜けた。
吸い寄せられるように,戻る。
看板の裏面はキッコーマン「醤油」。往時は大賑わいだったのだろう。
野良猫なのだが,つるやのおばあさんにとても懐いていた。「ミイちゃん」と呼ばれていたかな。綺麗な猫だった。
残念ながら,そろそろ出発の時が来た。
後ろ髪を強く引かれるが,撮り納めだ。
さらばだ。
路地を抜ける。
共通設計だったのだろうか,市場の西側には,兄弟のような2棟があった,
現役の居酒屋もあった。この辺りの街も丁寧に歩けば,面白い邂逅があった のかもしれないが,残念ながらこれにて別府市街の散策は完全に時間切れとなった。車を走らせて別府ICから高速に乗り,出張調査のために中津へと向かった。
中津散策・前編へ続く。
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