梟の島

-追想の為の記録-

大分・別府市街散策(1):有名・無名な近代建築を巡る。

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色気ある街角。 2020.08.21 大分県別府市

 


8月21日,大分・中津での出張。その前夜は,海崎,津久見そして大在で工場夜景を堪能し,25時半すぎに就眠。

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大在のホテルを出発し,朝の通勤渋滞に巻き込まれながら,別府市街を目指した。

渋滞は序盤が特に激しく,日本製鉄の工場に勤務する人間がとても多いようだ。工場正門の信号がボトルネックとなっており,これを抜けると流れは随分とスムーズになった。中盤からはストレスレスに進み,目星をつけておいた大分銀行南別府支店横の駐車場に無事に到着した。

早速カメラを2台,首と肩にぶら下げて,散策を開始する。まだ8時前だが,既に太陽はなかなかの高度から照り付けており,東京のそれとは違った暑さを感じる。

 

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駐車場から歩いてすぐに姿を現すのが,カトリック別府教会。

 

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1950年に竣工したという教会。全く詳しくないのだが,教区ではなくサレジオ修道会が運営をしているのは珍しいのだとか。

 

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正面側に回る。隣地の海の星幼稚園が工事中で,ほぼ更地になっていた。

予習が不足していたが,この教会はどうやら誰でも中を見せてもらえたらしい。それならば見学させてもらうべきだった。惜しいことをした…。

 

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青空を背に。重厚さを保ちながらも,ポップで愛らしい表情の建築物だった。

 

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続いて,教会のすぐそばにあるのが,旧別府郵便電話局電話分室。現地の看板には「旧逓信省別府電報電話局」と表記されていた。現在は別府市児童館として現役,かの有名な逓信省技師・吉田鉄郎による設計の近代建築だ。

 

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1928年竣工であるから,吉田鉄郎の初期の作品である。

 

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比較的簡素だが,格調を感じるファサードの表情。

 

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薄いコの字型の平面の中庭側も,隣の駐車場から覗くことができる。こちら側には丸窓があったり,妙にマッシブな塊があったりと,どちらかというと無骨で,洗練された感じがしないのが,却って面白かった。

 

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逍遥はまだ始まったばかり。児童館から東に進めば,すぐにまた昭和が顔を出す。

 

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朝の路地。

 

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児童館の交差点から1ブロックずつ南と西に移動した。住宅地図でお馴染みゼンリンの発祥の地,かつての「後理髪店」の,デコラティブで廃墟成分の強い看板建築は,今回のメインターゲットの一つである。

 

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隣の佐藤製菓の看板もまたいい味を醸し出している。

 

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現役の筈は無いのだが,なぜか西側の面の看板周りはよく手入れされているかのようで,文字がはっきりと見えていた。

 

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いっぽう,南側の看板は褪色していて文字は見えなかった。

 

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夏の眩しい朝,8時半にして既に汗ばんできた。

 

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再び北上すると,友永パン屋。逆光なのであまりまともな写真を撮れなかったが,記録的に1枚。こちらも別府を代表する看板建築の一つである。まだ朝は早いのだが,焼きたてのパンを求めて何人もの地元客が店に足を運んでいた。


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秋葉通りを横断し,さらに北へと歩いてゆく。

 

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喫茶アホロートル。旧遊郭建築だという。このあたりは,戦前は流川遊郭だったエリアだ。

まだ朝早すぎて営業時間外なので,とりあえず外観だけ拝ませていただく。

 

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装飾的正面。

 

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アホロートルの近くには,雰囲気のある定食屋。真っ昼間でコロナが無視できる社会情勢なら飛び込んでゆきたいような店構えだ。

 

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妙に色気のある建物が,今なお健在。嘗て店舗であったことは明らかだ。

 

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この近くには検番の建物も残っていたようなのだが,今はもう跡形もない。古びた飲食店が何件か点在するのみだった。

 

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更に北上して216号線に出ると,松下金物店が姿を現す。これもまた戦前の看板建築である。縦方向への意識の強いファサードであるが,特徴はやはりこのタイルの独特な色だろうか。

 

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凹凸のあるタイルによるファサードからは,重厚さと華奢さ,その両方を感じる。

別府市街に近代建築や看板建築はさほど多くなく,代表的なものの多くをこの記事で網羅している。生憎あまり時間が無かったので,別府市公会堂(児童館と同じく吉田鉄郎設計だが,リニューアルされて自分好みの雰囲気ではなくなってしまっている),野口病院(事務棟としてなお現役)など,駅の西側の建築を見て回ることが出来なかった。時間のある方はこちらも併せて探訪するとよいだろう。

 

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さて,松下金物店から東に歩いてゆく。「ソルパセオ銀座」の南端を左手に見る格好だ。別府市随一のアーケード商店街は,南北方向に300m以上続く,大規模な中心街である。

  

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 圧縮効果がサマになる,長大な商店街。

商店街の朝の「オフ」の感じは,どういう訳か好みである。 

 

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216号線を挟んだ反対側は「楠銀天街」。ソルパセオとは対照的に,こちら側からは人の気配をあまり感じられなかった。時間が無かったので実際の探索は割愛したが,ストリートビューを見るに,楠銀天街(の特に南端付近)には古い建物・商店とその痕跡があるようで,ここ「梟の島」的にはオススメである。

 

このまま216号を東へ進むと,もはや観光地としても有名な,登録有形文化財に登録された日本最古の木造アーケード,竹瓦小路へと至る。

その2(竹瓦小路)へ続く。

 

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