梟の島

梟の島 -叙情的叙景詩-

-叙情的叙景詩-

苅田工場夜景(1):橙の空とラスボスと,その仲間達。

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黄昏のラスボス。 2020.08.21 苅田

 

8月21日は朝から別府市街散策。午後は出張調査の後,中津市街を散策。アーケード商店街を巡り,スナック街を逍遥。

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さて,中津を後にして,北上する。丸一日堪能した大分県を離れ,福岡に戻って来た。行橋市も越え,苅田(かんだ)駅の近くまでやって来た。

苅田には「工場夜景のラスボス」と呼ばれる,超有名な被写体がある。三菱マテリアル九州工場のプラントだ。昨日も日豊本線の車中からその昼の姿を拝み,惚れ惚れしたのだが,今日はいよいよ満を持しての撮影である。

まずは運河越しにプラントを臨むスポットにやって来た。昨日は津久見市街で予想外に時間を食い,夕景を撮りそびれてしまったのだが,今日はまだまだ明るい。

 

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昨日に続き,穏やかな夏晴れの夕暮れ時。空も海も,青よりは緑に近い。

 

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この後,空はどのくらい焼けてくれるだろう。「夕方晴れ男」ぶりを発揮できるだろうか。

 

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このまま先へ進むと「半島」は袋小路となる。北側の沿岸は,県の港務所の管轄なので立入禁止(釣り人が居たりしたが)。下調べで,道路からラスボスを撮影できそうなスポットを探し出しておいたので,そこへと向かった。

 

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ちょうど橙色に焼け始めた空を背に,ラスボスが姿を現した。

 

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画角を右に移せば,さらにプラントは続いている。この情報量の多さこそ,被写体としての工場の魅力。そこに夕景としての叙情性が加わる。

 

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「4兄弟」の左にもう一人居るのだが,この地点からその姿を画角に入れることは出来なかった。

立入禁止区域の付近は,灰かセメントのような粉末状の細砂がこんもりと積まれていて,風が吹くと靄のように舞い上がる。これが目にも鼻にも刺激となり,なかなか苦しかった。しかし,夕景は刹那のもの。一瞬の絵を逃さぬよう,目を凝らし,頭をフル回転させ,撮影に集中する。

 

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工業港の夕べ。津久見といい苅田といい,その魅力にとりつかれつつある。

  

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巨大なプラントは,望遠で切り取るアングルのバリエーションも豊富だ。夜は決して明るい訳ではないので,やはり夕景がお勧めだ。

 

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ラスボスの反対側の運河を見る,半島の南側に移動した。九州電力苅田発電所の集合煙突が象徴的だ。空の色付きは極めて淡く曖昧だが,実に夏らしいトーンだろう。釣り人が大勢,穏やかな海に釣り糸を垂らしていた。

 

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麻生セメント,黄色のタンクが林立している。

 

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セメント工場らしい,雑然としたこの感じ。今日も静かに,夜を受け入れる。

 

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この小さな「半島」を中央で南北に縦断する道は,未舗装道。その向こうには,ラスボス側のプラントが鎮座している。

 

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アングルを工夫すれば,ラスボスの姿も望遠で捉えることができる。

 

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そしてすぐ頭上には,巨大なパイプが弧を描きながら架かっている。対岸の九州電力麻生セメント側から海を越え,ここに廃棄物を送り込んでいるのだろうか。稼働している気配は感じられなかったが,自分がプラントの中にいるような,あるいは打ち棄てられた都市にでも来てしまったかのような,不思議な錯覚をおぼえた。

 

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鳶が舞う。

2006年1月。山田孝之綾瀬はるかが主演の「白夜行」というドラマがTBSで放送された。殆どドラマには無縁の人生なのだが,どういう訳かあの作品にはしっかりとハマった。先日改めてU-NEXTで見返してみたのだが,当時アナログだった映像をデジタルで見ると,その画質の良さが不自然で驚いた。それはさておき,富士の製紙工場(春日製紙)が執拗なまで繰り返し,場面のブリッジとして映されているのだ。時に夕景であり、時に夜景であり。とにかくその絵の力が,ドラマにも少なからず影響を与えていた。

 

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他にも国道駅や昭和マーケット裏の路地,都橋などがロケ地として使われていたのだが,自分はそうと知らずに10年ほどの時を越えて,これらを「巡礼」していた。このドラマに不思議に引き込まれたことと,今のこの趣味の活動による「巡礼」は,決して無縁ではないだろう。

話は逸れたが,今は苅田だ。何故この話題に触れたかというと,今日の夕空の色があまりにも嘘のような橙色で,ちょうど白夜行のドラマの重要なシーンを彷彿とさせるようなホワイトバランスだったからである。まるで加工されたような,橙色一面の世界。湿度の高さゆえか,雲が多くて太陽が隠されているからなのか,今まで見たことのない,独特の工場夕景である。

 

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5兄弟をほぼ正面から拝む。港湾の向こう岸まで入れれば,足元まで良く見えるのだろうなぁ…とも思いつつ,動けるエリアで可能な限り,ベストアングルを模索する。

 

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「半島」には人家は無いし,街灯すら殆ど無い。空だけを感じ,純然たる自然光のみを相手に撮影できるのは,ある意味で贅沢なことかもしれない。

 

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空が燃えてゆく。ラスボスの足元に少しずつ,明かりが灯り始める。

 

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ディテールはまだ見えているが,今にもシルエットとなって黒く溶け始めてしまいそうな,瀬戸際だ。

 

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夕方晴れ男は健在だった。

 

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面的に展開するプラント。俯瞰する視点があればどれほど魅力的に見えるのだろう。このあたりにタワーでも建っていたら…と,大在と同じような妄想をしてしまう。

 

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時刻は既に19時。日没を過ぎ,残照のみが空を染める。保安灯の明かりが徐々に強く感じられるようになり,シャッタースピードは次第に長くなってゆく。

 

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程なくして,橙が桃色に変わった。夕景はいよいよ終焉を迎える。

 

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最後の残照が,力を振り絞るように,茜色に空を染める。夕空を背に立つ鉄塔は,いつでも至高の被写体だ。

 

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暮れなずむ空は程無くして褪色していった。今日はブルーモーメントを経ることなく,色調の変化は連続的だ。

鼠色はそのまま明度を失ってゆき,今日も夜が訪れる。 

 

苅田・工場夜景へ続く。

 

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