7月15日(木)。翌日の早朝に新川崎での仕事が予定されていたので,ラッシュを避けて前日にふらっと出発し,川崎市の小向マーケットへと向かった。2015年,2018年に続き,3年ぶり3回目の再訪である。
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▼2018年再訪の記録はこちらから。
探訪前日にTwitterで近影を探してみたところ,万国旗が外されているようだ。遡ると2019年11月頃には既に撤去されてしまっていたらしい。このマーケットの一番の魅力は褪色した万国旗にあると言っても過言ではなかったので,少し驚くとともに落胆した。しかし,これまで万国旗に隠されて見えていなかった空間の美しさに気付くことが出来るかもしれないので,捉えようによっては好機でもある。ベテラン選手が他球団に移籍した時のような新鮮さがあるかもしれない,などと思う。工業地帯の夕景の撮影と迷っていたのだが,結局はこの変化が決め手となり,「原点回帰」をすることにした。
15時台の湘南新宿ラインの2両目は,狙い通りガラガラだった。大崎以南は久しぶりに乗車したのだが,大崎から西大井にかけて,車窓の景色がみるみるうちに時代を遡ってゆくような感じがして面白い。新宿から乗り換えなしで行けるようになったので,以前に比べると新川崎駅は随分近くに感じられた。
後から振り返れば,この日は梅雨明けの前日だった。午後から日が差してきて,鹿島田駅の北側のバス停までの道程はかなり暑く,高い太陽に肌がじりじりと焼かれる感じがした。川崎駅方面へ向かうバスに10分ほど揺られ,小向バス停で下車するとすぐに,しっかりと見覚えのある外観が見えて来た。
小向マーケット,健在。
入口付近で,豆腐店のおばさんと常連客のおばさんが立ち話をしていた。あからさまにデカいカメラを持っていると話し掛けてもらえるので有り難い。
会話に少しだけ混ぜてもらい,絶対に怪しまれぬように木造アーケード市場への熱量を伝えておいた。お2人とも,3年前に解体された亀甲マーケットのこともご存知だった。
さて,3年ぶりの再会である。確かに万国旗が無い…。
ただでさえ色の褪せた世界から,さらに要素が失われ,セピア一色のような様相である。
2015年は昼前,2018年は午前中の探訪だったので気が付かなかったのだが,昼下がりに来るとこの構図がド逆光になってしまう。難しいが,少しでも魅力的に写したい。
常連客と,常連猫。
永久の5時50分。
スポットライトは儚げに。
今回は単焦点レンズも併用する。視野を定めることで,新たに見えてくるものを探したい。
松月堂の看板,これまでよりもはっきりと見える気がする。
幾つもの看板が通りに直交する向きで並ぶ,小向マーケットならではの眺め。
これまで以上に,看板の造作に意識が向かう。
豆腐屋の主人が自転車で帰って来た。「綺麗に撮ってな~」と声を掛けてもらった。
2015年・2018年とは逆,東を向いた撮影が多くなる。
このあたりの看板は,万国旗が外れた今も解読不能だった。豆腐屋のおばさんの話によれば,こちら側のお宅の方はほぼ亡くなられているのだとか。
見たままの色彩を再現できているだろうか。
昭和96年,7月。
連続する看板。ただどちらかというと,その下端に取り付けられた蛍光灯に目が行ってしまう。意外にも構図の作り方が難しい。
ナチュラル・セピア。
切り取り構図にも挑戦してみる。3度目ならではの心の余裕があるかもしれない。少し大胆な構図にも挑んでゆきたいところだ。
チェリーの看板の裏側には,末広堂の看板が残されている。
作り方は少し難しいが,それでも構図は無限に存在している。
豆腐店の斜向かいの洋品店。腕を伸ばして,テントの上面を撮る。
この辺りは,これまで万国旗が多くて撮影が難しかった場所である。初めて見る眺めだ…。
和洋傘,はきもの。
豆腐店の隣の茶屋は,いつ見ても新茶の暖簾を掲げている。
椅子も棚も,年代物である。
肉眼で見てみたいと思いませんか。
量り売りのできる商店。
正面入口に面した大野屋は,今日も現役だった。
豆腐屋には,滞在中だけで4~5人の来客があった。
錯綜。
外観。緑のシートは,あくまで部分補修のようだった。
さて,これだけではまだ満足できない。呆れられるくらいにしつこく,納得のゆくまで撮影を続けよう。
その7(2021年再訪・後編)に続く。
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