梟の島

-追想の為の記録-

長崎建築紀行(3):旧オルト住宅,雨の質感。

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英国風の空間。 2020.09.16 旧ウォーカー住宅

 


2020年9月16日(水)は,長崎出張初日。昼からの打合せまで時間があるので,早朝から長崎電気軌道を撮影。その後,市内の近代建築群を巡り,グラバー園へ。順路に沿って,旧ウォーカー住宅や旧リンガー住宅を堪能してきた。

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雨はだいぶ弱くなっていたのだが,旧リンガー住宅を出ると,またポツポツと降ってきた。足早に次の建物へと移動する。

 

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早速見えて来たのは,これまた国指定重要文化財旧オルト住宅である。
 

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リンガー住宅よりも背が高く,縦方向を意識させる意匠である。1865年,幕末の建物である。

 

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緑に覆われた建物の正面に回り,ペディメントに正対する。

 

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扉はこれまた軽やかなデザインである。

 

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旧オルト住宅。ウィリアム・ジョン・オルトが1865年~1868年に居住していた。その後は様々な用途を経て,リンガー家の所有となったという。

 

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ベランダへの突出部を作るのは,鉄則なのだろう。奥行を自然に広げることで,空間に豊かな立体感が与えられている。

 

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廊下。こうした室内空間には,どうにも「のっぺり」とした印象を抱いてしまう。水平方向の線が不足すると,写真の構図に締まりが無くなるのだろう。

壁面のごく一部が調査のために開けられており,どうやら修理工事が迫っているようであった。専門として携われないのは少々残念だが,木骨石造をいざ仕事で担当すると大変なこと間違いなしなので…趣味者としてこうして堪能するのは気楽なものである。

 

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銀杯。オルトとリンガーの写真も残っている。

 

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格調。

 

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雨に濡れた窓外の緑が,艶のある表面に反映する。

 

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ホワイトバランスが難しい。被写体の色を適切に表現するという点で最難関となるのが,窓際のカーテンだと思う。

 

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演出的であっても,これだけ「リアル」に囲まれれば「リアリティ」も十分だ。

 

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リンガー住宅と同じように,ベランダの天井は斜めの格子。

 

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ずらりと並ぶ開口部と建具。壮観である…。

 

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住宅とは思えないほどの,重厚な空間。

 

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整然と線の並ぶ,列柱廊の如きベランダ。

 

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雨の質感がよく似合う建物だ。

 

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ポーチの部分のみ角柱,その他は丸柱で構成されている。柱に溝のない,トスカナ式のオーダーである。

 

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裏面に回ると,しっとりとした質感が素晴らしかった。

 

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本家・ダスティブルー。

 

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ベランダの庇が無く,むしろ正面側よりも明るいので,石の壁に意識がゆく。

 

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絶妙な色の取り合わせで,個人的にとても気に入った。水平方向の線も多く存在しているし,こういうアングルには自分の「好き」が記号的に詰まっている。

 

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左手は附属屋,こちらも国指定重要文化財

 

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最後にもう一度,正面側のベランダを。

 

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縦を意識させるプロポーションと,反復の多いファサード,水平方向の線に,色。リンガー住宅と類似のデザインなのだが,明らかにオルト住宅に強く惹かれるものを感じたのが面白かった。

 

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少し名残惜しさすら感じるほどだった。

 

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1887年竣工の,旧スチイル記念学校。中はギャラリーとなっていたが,空間としてはガランとした印象だった。

 

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そして満を持して…旧グラバー住宅は,工事の真っ最中であった。恥ずかしながら入園時までその事実をすっかり失念していた。上手くすれば中を見せてもらうことも(立場上)できたかもしれないだけに,愚かであった。きっと次に訪れる機会に恵まれた際には,既に美しい姿を取り戻していることだろう。少々残念ではあったが,オルト住宅までで既に満腹である。十分な満足感を得てグラバー園を後にした。

思案橋逍遥へ続く。

長崎建築紀行その4では,黄檗建築で超有名な崇福寺を紹介する。

 

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