翁島別邸。 2022.03.20 栃木市
3月20日(日)。小山駅前,大平下駅付近を散策した後,栃木県栃木市へ。市内の近代建築を巡りつつ,街を散策している。
▼その1はこちらから。
anachro-fukurou.hatenablog.com
岡田記念館にはもう一つ,少し離れたところに「翁島」という別邸があるので,そちらの見学へ。
記念館の反対側の板壁。
渋い菓子処。
翁島別邸(1924,国登録)。現在工事中につき,外観はこの状態である。
大工さん1人で工事を行っているらしく,改修にはまだまだ長い年月を要するのだとか。
鼠漆喰。柱は木曽檜が多用されている。
見上げれば天井板には,小さな節のある欅の一枚板を組み合わせている。
書斎の床柱は黒柿,落とし掛けは中国産の亀甲竹という,豪華な造り。
4ヶ月前に亀岡家住宅で圧倒されたばかりだったので,「ショック」は少なかった。
茶の間には「翁島」の額が掛かる。こちらも秋田杉の天井板と,磨き仕上げの柱が美しい。
本邸からこちらに移り住んで米寿を迎えた当主をいつしか「翁」と呼ぶようになり,この別邸を翁島と呼ぶようになったのだという。
翁島と聞くと磐越西線を連想する,これまたある種の「職業病」であった…。
そして恐るべきはこの床板…向こうからこちらまで,1枚板である。町内の欅の老巨木を割らせて張ったという。「うわっ…」と思わず声が漏れた。
奥の座敷の床の間は紫檀,黒檀,鉄刀木などが用いられている。天井板は屋久杉だとか。
座敷。
薄暗い階段で2階へ。
2階は8畳の座敷2間と廊下のみ。
床柱は葦の天然絞り丸太,床板は紅葉。床板で家一軒が建つ値段だという。
見学・撮影には,ブルーシートの色が少々気掛かりだったが仕方あるまい。綺麗になった日には,さぞ美しかろう…。
この階段の陰翳の深さ,撮影は難しかったが気に入った。
しれっと一本材を使う,こういう美的感覚(と金銭感覚)が流行した時代は,さほど遠くない。知識としては勿論分かっていても,肌の感覚で理解するのは難しい。
厠。ここの床板も欅の一枚板。
風呂へ。何やらドラマで黒木瞳の入浴シーンを撮影したのだとか。
天井は陽月亭と同じ唐笠天井だった。
改装中であり,また既に外が暗かったので,撮影は難しかった。しかしこれだけ豪勢な建物だとは思っていなかったので驚いた。また改修工事が終わったら,是非じっくりと撮影してみたい。
さて,翁島の見学を終え,これにて本日の行程はほぼ終了。少し遠回りをして駅に戻ろう。
それにしても,空はすっかり分厚い雲に覆われてしまった。珍しい事に,夕方晴れ男の力は今日は発揮できなかった。
この時間で曇ると,何だか竜頭蛇尾の感じがして憂鬱になる。
万町交番前交差点の北東には,旧県立栃木病院栃木分院,と言われる建物がある。
早春。
大きなガラス板の入る建具に感じる美しさは,その無防備さと脆さにあるのかもしれない。
田村歯科醫院,忘れず再訪。
金本商店。
第二公園の東側までワープして,南下する。
栃木文化会館の北側の道を西へ歩く。
昭和の香り。
素敵な空間。
菓子司「松屋」。とても立派な造りだ。
かつら…?
裏道にはなにもなかったので,県道11号線沿いに戻る。
若松理容の角を曲がり,西へ。安全太郎は良い子だよ!!
金魚湯。それなりに賑わっている様子だった。
相生橋で巴波川を渡り,市街地にさようなら。
黄昏のみつわ横丁を駅へ。
地方都市のこういう所がとてつもなく愛おしい。
野良の錆を最後に撮り,駅に戻る頃にはすっかり夜の帳が下りていた。
今季何度目の211系だろうか。小山行に乗り,小山からは快速ラビットに乗り換えて帰京した。
晴天に始まり曇天に終わるという,あまりドラマティックでない展開ではあったが,栃木市の近代建築で完全に満腹になった,充実した一日であった。
▼関連記事はこちらから。
▼ 宜しければクリックのご協力をお願い致します。