2020年10月31日(土),秋の五能線を追い求める撮影行の2日目。早朝から陸奥柳田~越水の「山線」区間で数々の列車を撮影。午後は岩館方に舞台を移して撮影を続けている。
▼朝の撮影はこちらから。
同業に取り囲まれた状態での撮影に心折られ,挙句の果てにはレンズキャップを米代川に「放流」してしまい,失意のまま黄昏を過ごす。心を落ち着かせて車に戻り,ヘッドライトを灯し,暖房も付けて,能代駅へと運転する。昨日の五所川原駅に続き,今日も能代駅で夜の撮影を行う予定でいるので,まずはその駐車スペースの下見である。駅正面に向かって右手に駐車場があった。
ちょうど月の出の直後で,能代駅の電光看板の中央に満月が煌々と浮かんでいた。
この後,ホテルにチェックイン。何故か喫煙部屋だったのだが,まあ良い。一度シャワーを浴びて,夕飯休憩。テレビでは相葉君が保護犬のシーズーのトリミングをやっていたのを記憶している。
暫くは身体を休めつつ写真整理に充て,21時20分頃に再出発。東能代からの区間便,単行の137Dが入線し,東能代へと回送されるまでの間に,東能代行きの最終列車328Dがやって来る。束の間ではあるが駅に2本の列車が並ぶのだ。下見しておいた駐車場に車を停め,入場券を購入して無人のホームに入る。跨線橋の窓は開かなくなっていたが,ガラス越しに撮影は可能だった。
待機していると,ちょうど137Dのヘッドライトが見えた。
1番線に入線。数人の客を下ろす。
前照灯はあっという間に消え,車内灯も落ちてしまった。
今度は尾灯が点った。
決して明るくは無いので,丁寧に撮影してゆこう。時間ならば十分にある。
闇夜の単行列車。ホームには,自分のほかに誰もいない。
正対。
気配は感じられなかったが,乗務員は車内で休憩をしているようだった。
跨線橋上での撮影に一区切り付いたので,対岸の2番ホームに回る。
東能代側は,もちろん前照灯も落ちていて,「お休み中」の表情だった。
今度は1番線に回り,望遠で撮る。
21時35分に137Dが到着し,328Dは2149能代発。十分に時間はあると思っていたが,実際は想像以上に短かった。気付けば列車の入線時刻が迫っていたので,2番ホームの東能代側で待機した。しかし,走行中の列車がハイビームを落としてくれる筈もないので,後から思えばこの位置取りは間違いだった。1番ホームの先端で待てばまだ撮影可能だったのだが,単行と3連が並ぶという事だけを考慮した位置取りは浅はかだったかもしれない。
328Dはタラコ2両を先頭に,後ろに五能線色のキハ40を従えた3連でやって来た。
大戸瀬の俯瞰で撮影した編成だろう。
ヘッドライトをファインダーの外に追い出して,切り取り構図で乗客の乗降を撮る。
駅も閑散としていて,乗降客は1名のみだった。
穏やかさの中に,確固たる意志を秘めているように見える表情。余命は短いが,その使命を最後まで全うする。
車掌は時刻を確認。
閉扉,出発の刻。こうしてこの場面に立ち会えるのも,最初で最後の機会だ。
単行列車より一足お先に,南へと向かう。
最後は肉眼で,本日の能代駅発の最終列車を見送った。何の気なしに小さく手を振っていたら,ちょうどホームを去る列車の最後尾から,車掌が敬礼で返してくれた。この時間に駅員は居ないので,まるで自分がその代わりを担えたかのように錯覚し,五能線の日常のドラマの一部に自分が組み込まれたようで嬉しかった。
引き続き1番ホームには,東能代への回送を待つ137Dがぽつんと停車中。運転士は運転室で休憩中のようだった。1番線側にふたたび回り,最後には無人のホームに三脚を立てて,セルフタイマーで記念撮影。望遠構図で,千畳敷と同様,テイク3でようやく納得のゆく絵が撮れた。
そうこうしているうちに,タラコの発車から10分ほどが経過しただろうか。停車中のキハ40のエンジン音が大きくなった。そして列車は何の合図もアナウンスも無く,そろり,そろりと動き始めた。今日の仕業は回送を含めて残り1往復半。頑張ってね,と心の中で呟いて,漆黒に消える後ろ姿を見送った。
煤煙の香りの残るホームは蛍光灯の光が無駄に明るく,階段の位置を知らせる鳥の鳴き声のような録音テープが繰り返されるのみで,一切の人の気配がない。少し心細くなるような,不思議な空間だった。
車に戻り,数分のドライブ。コンビニに寄ってアイスとトリスハイボールなどを買い,ホテルに帰着すると,駐車場が満車だった。幸い駐車場の最奥部から50mほどさらに奥に入った第二駐車場のような場所があったので,ここに停めたのだが,遠いし暗い。GoToの影響なのか,ただの10月末の土曜日に能代のビジホが満室になるとは驚いた。再びシャワーを浴びて,少しのんびりと過ごす。再びTVを点けて,BSでバイきんぐの西村とヒロシのキャンプ番組をぼんやりと眺めた。翌朝に備え,23時半頃に就眠。
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