梟の島 -叙情的叙景詩-

-叙情的叙景詩-

肘折温泉(2):薄暮の街を彷徨い,遠い冬の日を想う。

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夜へ。 2021.11.28 肘折温泉

 


11月28日(日)。出張の前々日に出発。村山駅前を駆け足で回り,新庄へ。アーケード商店街「新庄一番街」,旧楯岡銀行新庄支店,あけぼの町飲食店街などを歩いた。40分ほど車を走らせ,夕刻の肘折温泉に到着した。

▼その1はこちらから。

anachro-fukurou.hatenablog.com

温泉の中心街から少し離れ,銅山川に沿う道へと出た。

 

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川岸に建ち並ぶ家。

 

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山肌はうっすらと雪化粧。午後の新庄とは打って変わって,空気がずいぶん冷たく感じられた。

 

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ちょうど日没の時刻である。

 

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人の気配は無い。

 

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ふと,12年前の冬に訪れた下呂温泉の景色を思い出した。温泉寺から街を見下ろした,あの青白い冬の黄昏を。

19歳の自分には,何もかもが新鮮だった。

購入して間もないデジタル一眼レフ,PENTAX k-7を連れ,489系ボンネット車両の急行能登号で上野を発ち,未明の糸魚川に下り立った。良く晴れた一日,沿線で大糸線のキハ52を撮影。これが最後の機会だった。東横インの会員登録は,この日の夜の富山で行った。翌朝は高山本線のキハ58を撮影し,昼は髙山を散策。夕刻に下呂温泉に到着し,少しだけ街を歩いた。青白い夕暮れを眺めた後は,事前にネットで調べて見つけた,駅から少し離れた食堂へと歩き,夕飯を頂いた。店の方が私の来訪をとても喜んでくれて,とても親切に,わざわざ駅前まで車で送ってくれた。駅近くの「幸乃湯」に浸かり,コーヒー牛乳を飲んだ。夜は多治見の鄙びたビジネスホテルに泊まった。消毒液の匂いのする,薄暗い,病院のような廊下だった。翌朝は手作りの朝食を喫茶室で食べた。永保寺を見た後,虎渓公園の展望台で休憩していたら,地元のおじいさんが話しかけてくれて,わざわざ車で町内の釜を案内してくれた。

今と比べると,当時はシャッターを切る頻度が著しく少なかったので,残念ながら写真は多くは残っていない。それでも,この旅の記憶は今も色褪せず,原体験の一つとして,鮮やかに記憶されている。そしてさらに,あの頃に書いた長い紀行文が,欠損したディテールを蘇らせてくれる。

12年後,今の記事を見返して,同じように今の自分に感謝できるだろうか。

久々にk-7を連れ出してみても良いかもしれないな,と思った。k-5,k-3で鍛錬を積んだ今の腕があれば,気難しくて癖が強く,少し前時代的な初代の愛機も上手く使いこなせるかもしれない。使いこなしながら,懐かしさに触れられるかもしれない。

 

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初雪を冠する山々に囲まれて,川沿いにぽつんと一人で居る。遠い冬の黄昏の寂寥感を,12年の時を越え,全く異なる土地で感じた。そこに共通するのは,自分という存在と,「温泉街」というキーワードのみだった。

 

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あまりにも寂しくて,「せつねぇ…」と何度呟いたことか。

 

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再び温泉街に戻ろう。

 

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橙色の光が目立つようになってきた。

 

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公衆浴場「上の湯」。

 

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少しマゼンタ寄りの,ブルーモーメント。

 

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この時間の光を見たままに写してゆくのが,どうにも楽しい。

 

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光を美しく撮ることに拘っていると,みるみるうちに空は暗くなっていった。

 

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これでもまだ17時前なのだ。

 

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雪のない長い夜は,この季節ならではであろう。

 

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眩いヘッドライトに照らされる。

 

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あたたかい匂い,所々から立ち上る湯気。

 

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北側に続いてゆく道へ。

 

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共同浴場「疝気湯」。

 

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中心街に戻る。

 

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ブルーモーメントも終焉を迎え,いよいよ空は黒く沈もうとしていた。S字に曲がる道の両側にそびえ立つ旅館の狭間に,宵の明星がきらりと光っていた。

 

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これは紛れもなく,求めていた旅愁である。

 

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商店で土産の酒とカップ酒を買い,宿に戻った。

 

その3(三浦屋旅館で過ごす一夜)へ続く。

 

 

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