梟の島

-追想の為の記録-

ヴォーリズ設計の和風住宅「岡家住宅」,美は細部に宿る。

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ヴォーリズ設計の和風建築。2019.11.24 蒲生郡日野町・岡家住宅

 

近江日野牛を岡﨑レストランで食し,ここから10分弱で,ヴォーリズ設計の和風建築である「岡家住宅」に到着。ウェブを通じて事前に予約をしており,見学客は我々2人のみだったが,15時から岡さん夫妻が丁重にもてなしてくださった。

玄関のタイル,フローリングに始まり,どこをとっても細部まで拘りぬかれていて,気持ちが良い。作り付けの家具,巾木,縁桁,センターからずれた床柱と仏間仕様の押入収納,米櫃まで作りつけられた収納棚など,見どころは沢山。

 

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階段室の下にあたる小部屋。書斎であり,事務室兼暗室だった時代もあるという。

 

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作りつけられた神棚。ヴォーリズ建築と神棚という組み合わせは珍しいとか。

 

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台所横の配膳窓。

 

f:id:anachro-fukurou:20200125150705j:plain階段室。

 

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近代建築は,和風も洋風も,階段室が魅力的である。

 

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出窓のある2階の和室。

 

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南西の寝室。板の扉の重厚さに虜になった。

 

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窓の外の水切り勾配がヴォーリズ建築の特徴らしい。建具は内と外で寸法が異なるので,精度が要求されるという。

 

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中廊下の竿縁は,なんと廊下で細い1本材を使っているとか。

 

「美は細部に宿る」,ミースの言葉(もとは「神は細部に宿る」だが)を借りようか。設計者の徹底した拘りと,それを実現する手仕事。蓬嶋楼の記事にも記したが,見る側はこのような熱量が注がれているか否かを無意識に判断し,瞬時に評価しているのだと思う。「有機的」(こういった物に相対した際に自分が使う言葉である)な空間というものは,結局このようなエネルギーを蓄えているのだ。

 

これだけの力が注がれている近代和風住宅,そこにヴォーリズの洋風のセンスが織り交ざっており,岡家住宅はとても稀有な存在であるように思う。しかし,登録文化財に登録されたとはいえ,来館者が決して多い状態ではないようだ。鉄道駅からのアクセスがやや遠いので仕方がないのかもしれないが,北西には近江八幡,南に行けば油日神社方面,そして北には永源寺や湖東三山と,観光地は十分な数が存在しているので,是非これらと併せて探訪してもらいたい場所の一つである。一人でも多くの人の目に留まるよう,祈るばかりである。

 

▼岡家住宅の公式HPはこちら

https://voriesinkaigake.net/

公開日程が出ているなど,情報も沢山。見学予約もこちらから出来る。

 

 

 

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かなり長時間にわたって説明をして下さったので,気付けば外は黄昏時。残照が鮮烈な橙色を雲に残してゆく,独特の色彩の夕景が忘れられない。ちょうど日が完全に沈んだ頃,米原への帰途についた。

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