桃色の空。 2021.10.17 土浦
10月17日(日)。水戸出張の前日,土浦散策を決行。桜町の歓楽街,川口ショッピングセンター MALL505,土浦名店街などを巡り,看板建築群を撮り歩きながら駅西口を北上してきた。
▼その1はこちらから。
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引き続き本町通りを北上してゆく。
暗渠のような雰囲気の道。
ナショナル自転車の赤い看板,錆の浮いた理容室の建物。
控え目な塗色ながら存在感のある街灯と。
理容うちの。
2階の建具が素敵な建物。
左に折れ曲がる道の突き当たりには,少し風変りな病院建築があった。
右折し,真鍋宿通りに入る。道なりに左カーブを曲がってゆく。
パッチワーク。
建具店。良い色だ。
気付けば薄日が強くなってきている。
浅い西日が,棟瓦を黄色く照らした。
その刹那,水平線近くの雲が切れ,強烈な光線となった。
雲っていた日ほど,夕焼けはドラマティックになる。夕方晴れ男の底力見たり。
錆色と夕雲と。
向かうは旧真鍋宿の街並み。少しずつ出桁造の建物が現れはじめた。
信号を渡ると坂の西側の街並みから,宿場町の雰囲気が感じられる。駆け足で撮影し,先を急ぐ。
鼠色と橙色を混ぜたような空。日本海側で見た色に近い。
薄い店。
急勾配に建ち並ぶ。
夕焼けがクライマックスに差し掛かろうかという所で,本日最後の目的地に到着した。間に合った…。
藤本蠶業株式會社支店。まさに10文字,この看板ありきで設計されたかのような意匠である。
側面。生活の営みは,途絶えてしまったようだ。
正対。
桃色の夕空を背に,銅製の雨樋。
窓ガラスから中を覗く。廃墟と化してしまっているらしい。
すぐ隣の蔵も十分に魅力的だった。
それにしても幻想的な空である。橙色から桃色へ,刻々と変化してゆく。夕暮れ時のホワイトバランスの調整は慣れたものである。
艶やかで,不思議で,そして幾許かの儚さと憂いを感じる。
世界がすっかり桃色に染まってしまったかのようだ。
日没を過ぎ,残照の時間。空が燃えている。
刻々と変わる色調を見たままに記録してゆく。
遺族の家。
電話三七九番。
桃色は一瞬のうちにピークを越え,徐々に力を失いつつある。
今日が終わってゆく。
視界の赤さが薄れてゆく。ブルーモーメントの足音が聞こえる。
空を撮っているのか,建物を撮っているのか,そんな問いは問答無用で棄却する。この空を背にこの建物を眺めることに意味と価値があるのだ。
夕空への惜別。
桃色の呪縛から解放されたかのように,世界は平静を取り戻し,そして光を失う。
ちょうど街灯が点ったところで,この建物にも別れを告げた。
鼠色の帰り道。
交差点で西を見れば,上空の風に千切られた黒雲が幾重にも連なり,その向こうには鮮やかな橙色の空が広がっていた。
すっかり暗く寂しくなった真鍋宿通りを歩き,土浦駅方面へと戻る。ただしホテルに直帰しないのがフクロウ流。もちろん,夜の街の表情も見て回る。
その7へ続く。
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