梟の島

梟の島 -叙情的叙景詩-

-叙情的叙景詩-

飯坂温泉散策:冷たい秋雨の降る夕刻,鯖湖湯に癒される。

 

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ステンレスの旅情。 2016.09.20 飯坂温泉

 


2016年9月20日(火)。仙台での学会の前日に旅立つ。当初は直接仙台に向かう予定だったのだが,英語発表の準備を終えて少々ソワソワしてしまったので,急遽特急券を乗車変更し,やまびこ号で福島へ。福島駅の0番線から福島交通飯坂線に揺られ,飯坂温泉へと向かうことにした。

 

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飯坂線は雨の単線をゆっくりと進む。

 

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15時すぎの列車で,終着の飯坂温泉駅に到着。早速,温泉街を逍遥する。

 

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駅前の薬局。堂々とその4文字を掲げるか。

 

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9月なのに気温は10℃ほどで,霧雨が冷たい。

 

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高低差が大きく,川沿いに温泉街がへばりつくように展開されている。

 

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平日の夕方だからだろうか,人の気配が殆ど感じられない。

 

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廃業してこのような状態になっている建物も多く見られる。

 

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一度は栄華を誇った温泉街,これが現代の宿命である。

 

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年季の入った酒店。福島と言えば花春,榮川。

 

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寄棟屋根,なまこ壁の蔵が印象的。

 

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幾つか町内の公共浴場を探したのだが,営業日と距離の兼ね合いで,結局は王道の「鯖湖湯」にやって来た。

 

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番台に入湯料を払い扉を開けると,いきなり真正面に脱衣場があり,その右手には壁を隔てずに浴場が見えている。身体を洗い,いざ入ろうと思ったが,湯船の湯はこれまで経験した事のないレベルの熱さだった。熱い温泉は得意ではないので,この湯温ならば普段は腰湯くらいで満足してしまうところだが,この日はとにかく身体が冷え切っていたので,少しずつ身体を馴らしながらゆっくりと身を沈めてゆく。蛇口の近くの温度計を見ると(恐らく壊れていたのだろうが)「48℃」と表示されていた。さすがに48℃は嘘だとしても,実際に44℃はあったのではないだろうか。地元の老人たちは当たり前のように肩まで浸かっていたどころか,「今日はちょっとぬるいね~」などと会話していて吃驚した。

 

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「48℃」に浸かったので,湯上がりの身体は火照るように熱かった。すぐ近くの自動販売機で何か買って飲んだ記憶がある。駅に戻る前に,少しばかり散策。

 

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わたなべパンというパン屋に立ち寄り,飯坂名物のラジウム玉子を使ったラジウム玉子パンなるものを購入して,食べ歩きをした。素朴で予想通りの味ではあったが,とても記憶に残っている。

 

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17時すぎの列車で飯坂を発つ。

 

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老齢のステンレス車両。凹凸のある側面が懐かしい。

交換列車が遅れたためか,上りの福島行は4分ほど遅延して福島に到着。ぎりぎりの乗り換え時間で東北本線の下り列車に乗る予定だったのだが,何とJRは接続を取ることなく定刻で発車していってしまった。北へ立つ東北本線の列車を0番線から見送ると,次の列車は1時間後。この時間を使って狸小路など見に行けば良いものを,当時はまだそこまでの知識を持ち合わせていなかった。スーツケースやPCを持っていて自由が利かないこともあり,ホームのベンチで時間を潰すことにした。しかしこの時,気温は8℃。予想外の冷え込みに,学会発表用のジャケットを羽織って暖を取った。20分後に藤田行の列車があったので,これに乗って藤田まで移動。いざ着いた藤田駅は,ホームこそ長いものの,駅構内に時間を潰せる場所は無かった。乗って来た車両は早々に福島へと折り返してゆき,駅構内は静寂に包まれた。雨が降っていたため,30分ほど跨線橋の中でぼうっと過ごした。在来線の西側を東北新幹線が走っており,16両の小さな窓から漏れる黄色い光が目にも留まらぬ速さで北へと流れていった。

心細い無人の小駅で眺めた夜の雨が,この一日で最も記憶に残ったといってもよいだろう。5年近くが経った今も,あの空気感が少し恋しく感じられることがある。あてもなく過ごした無為な時間こそ,旅にとって最も重要なものなのだと,改めて感じる今日この頃である。

仙台に着いたのは20時過ぎだった。駅ビルの中で忙しなく牛タンを食べ,ホテルにチェックイン。半日弱の不思議な旅を終え,翌日からの学会に備えた。

 

今ならもっときめ細かく丁寧に歩いて,丁寧に撮影してゆくのだろう。しかし5年前のこの日の最も印象的な記憶はというと,鯖湖湯,ラジウム玉子パン,そして先に書いた通り藤田駅の雨の景色である。そのいずれも,写真に収めていないものなのだ。そう考えると,カメラというものの功罪は計り知れない。あの機械に己の非日常の時間を束縛されぬよう,意識をしておかなければならない。

何はともあれ,もし機会があれば今度は飯坂の温泉旅館で一泊して,ゆっくりとした時間を過ごしてみたいものである。

  

米沢散策へ続く。

 

 

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