2018年1月6日,長野旅行初日である。松本市街を散策しながら,大手1~3丁目の街に残る建築群を見た後は,旧開智学校へ。
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その後は縄手通りと中町通りで,古い街並みを見て回った。
松本建築散歩の最後に,バスに乗り,駅から少し東に外れた所に位置する旧制松本高等学校へと向かった。
旧制松本高等学校は,1919年開校の官立高等学校(今でいう国立大)であり,信州大学の前身でもある。いわゆるナンバースクール(一高~八高)に続く,9番目の官立高校として,およそ100年前に設立された。建築としては,1920年竣工の本館と1922年竣工の講堂が残り,ともに国指定重要文化財である。現在は「あがたの森文化会館」として公開されている。
まず講堂は,なんと新春歌い初め会開催中。残念ながら中には入れなかった。
同市内の開智学校と比べると,半世紀ほど時代が下る。和風の意匠や塔屋は完全に消え去り,洋風建築を日本の木造建築に落とし込んだ形となっている。当時の学校建築の様式を今に残す,貴重な遺構である。
本館の正面は,隅切部のファサードが目を引く。駒形破風を頂部に載せた,コの字平面の建築物。なかなか迫力があり,威厳を感じるが,それでいて優しさ・愛らしさも感じられる。外観はともに下見板張り,そして日本的な要素は屋根の桟瓦にも見られる。
内部。いきなり正面に,絵になる階段。願わくば展示物はどこかに集めて隠して頂き,純粋な建築そのものの姿を拝みたいものだ。
玄関ホール。大正期のイメージ通りのデザインである。
ちょうど隅切部の「135度」の折れ曲がりが見える位置にて。
中央階段の親柱の造作は,何かを意味しているのだろうか。
今度は,隅にある階段室。こちらは明るい印象で,ディテールも中央階段とは異なっていた。
廊下。腰まで板張り,その上は漆喰仕上げ。床板はわりと明るい色調だが,それでいて落ち着いた雰囲気だ。
陰翳が絵になる。
復元教室の様子。机も椅子も,比較的華奢に見えた。
高い窓,光沢のある床。
こうして視点を低くしてみると,また美しい。腰の高さの水平線は,意匠性を高める重要なエレメントである。。
中庭を見る。上げ下げ窓の桟の細線,随所で縦横が切り替えられる板壁。屈曲する部分はちょうど中央階段があるので窓のレベルが変わるが,それもまた秀でた意匠によって全体に良く調和している。
閉館時間の迫る中,駆け足で見て回った。
一点透視。外観でも内部でも,細かい線が多く反復されるとそれだけで美しい。それだけで有機的に感じるものだが,構造的も,仕上げ材までもが木造なのだから,素晴らしい。
そして調べたところ,ちょうどこの記事を執筆している2020年現在,補強工事が行われているようだ。願わくば仕事で携わってみたかったものだ(研鑽を積み,いつの日かこのくらいの著名な建築にも携われたらと願う)。この先も適切な形で,人々に愛されながら保存・活用されてゆくことだろう。また3年度,美しく強い姿で公開される日に期待である。
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