梟の島

-追想の為の記録-

小倉・旦過市場(4):深夜2時の静寂と,朝10時の活況と。

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深夜2時半。 2016.08.25 旦過市場

 


2016年8月25日(木)。建築学会大会を中座し,戸畑でレンタカーを調達。小倉の延命寺臨海公園で新日鐵住金八幡製鉄所の夕景を撮影し,夜の帳が完全に下りてから,JNCマテリアル戸畑工場,三菱ケミカル東海カーボンの工場夜景を撮影してきた。

▼その1はこちらから。

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7時間を超える撮影を終え,小倉へ戻る。夜が遅くなることが分かり切っていたので,この日は漫画喫茶で一夜を明かす計画である。コインパーキングに車を停めて「チェックイン」する前に,深夜2時半の旦過市場を覗いてみることにした。

旦過市場といえば5月に探訪したばかり。

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中4ヶ月弱で再び撮影の機会を得た格好になる。

 

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丑三つ時の市場。アーケードの明かりも殆ど消灯しており,手持ちでは撮れないレベルの暗さである。工場夜景の装備そのままに,三脚を立てて撮影。

 

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賑々しさの象徴のような商店街が,寝息を立てて深い眠りに就いている。

 

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くじらの幟がゆっくり,ゆっくりと,生温い夜風に靡いていた。

 

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翳と翳に挟まれた道。酔っ払いの叫び声が,微かに遠くから聞こえてくる。

 

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4ヶ月前に歩いたばかりだが,南端のカーブは深夜に見てもどこか艶っぽい。

 

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「夜の街の昼の顔」を撮る事は多いが,「昼の街の夜の顔」もまた面白いものである。深夜という時間の持つ特有のスリルに,幾つになっても背筋を寒くしていたい。

 

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万国旗の揺れる横道から,市場を去る。

漫画喫茶に入店すると,あいにくフラットシートは満席。シャワーで汗を流し,リクライニング席で7時間ほど眠り,十分に体力を回復することができた。

漫画喫茶の室内環境,特に徹底した遮光性と恒温性は,時間の経過を忘れさせるだけでなく,生物としてのリズムを完全に狂わせる恐ろしさがある。支払いを終えて外に出て,16時間ぶりに白い光を浴びた時,頭のみでなく身体にまで軽いショックをおぼえた。

 

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再び旦過市場,北側から神嶽川を望む。モノレールとのギャップが強烈である。

 

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さっそく旦過中央市場へと入ってみる。先日撮影した閉店直前の寂しげな雰囲気は嘘のようで,店舗はみな元気に営業中だった。

 

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5月はほぼ暗闇だったこの道も,蛍光灯がすべて灯り,十分に明るかった。

 

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ここに平成の要素は無いのではないだろうか。

 

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年代物の自転車も,変わらずこの場所に置かれていた。

 

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佐島商店の看板は,明るい光の下で見ても美しい。

 

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メインストリートと並行する,三角形のもう1つの長辺。このあたりもバリバリ現役の雰囲気の店が多く,働き手も想像以上に若かった。

 

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年季の入った看板たちが並ぶ。

 

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魚 vs 肉。

 

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日常は続く。

当時はあまり「寄り」の絵を撮影していなかったようである。やはりデジイチで旅先の街並みを撮影する場合,広角レンズと標準レンズを装備した2台を持ち歩かない限り,短時間で充実した撮影を実現するのは難しい。尤も,12mmから100mmくらいまでの汎用ズームレンズがあるのであれば話は別だが。

 

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そして長辺と長辺が交わる三角形の鋭角の頂点へ。こんな美しい絵が存在していたとは…大興奮だった。

 

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斉藤商店からメインストリートに戻る連絡通路には,魚屋とキムチ屋が並ぶ。

 

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前回の探訪時に見ることの出来なかった,南側の連絡通路が開いている様子も,しっかり記録することが出来た。青果店とたばこ店の品物が道に迫り出している様子を見て,何だかとても嬉しい気持ちになったのだった。

 

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最後は路地を抜けて,旦過市場にさようなら。

この後は門司港に車を走らせ,定番スポットを巡る。門司港駅は改修工事中で,その姿を拝むことは出来なかったが,お馴染み「レトロ」建築の外観をザッと見て回った。旧JR九州本社ビルは少し中に入ってみたが,渋くて素敵だった。また撮影してみたいのだが,ホテルに生まれ変わるという話も聞いたことがある。願わくはあのシブい空気感を損なわずに利活用していただきたいものであるが,果たして今頃どんな姿になっているのだろうか。続いて訪れた九州鉄道記念館では,懐かしい古参車両たちとの再会に心が躍った。14系の中に入って寝台車の空気を吸った時,もう戻れない時を思い,涙が溢れそうになったことを鮮明に記憶している。機関車の汽笛を遠く聴きながら,夜行の客車列車で国内旅行を楽しむことの出来る日が,またいつか訪れたりはしないものだろうか。最後にはまなす号に乗車した日を起点に考えると,この九州探訪はたったの半年後。それから更に5年が経った今もまだ,諦め悪くそんな事を考えたりしている。

こうして門司港を簡単に「観光」した後は,再び西へと進路を取り,小倉を越え,その先の若松へと向かった。

 

若松散策へ続く(※近日更新予定)。

 

 

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